よくあるご質問

診療疾患・治療

Q.大腿骨寛骨臼インピンジメント(FAI)の「股関節鏡手術」について教えてください

A.大腿骨寛骨臼インピンジメント(FAI)とは、股関節の構造に異常があることで、大腿骨と骨盤側の寛骨臼が衝突し、関節唇や軟骨を傷つけてしまう状態です。その結果、股関節の痛みや可動域の制限が生じます。

大腿骨寛骨臼インピンジメント(FAI)とは

FAIにはいくつかのタイプがありますが、なかでもよく見られるのが Cam変形※1 と呼ばれるタイプで、大腿骨頭の一部が出っ張っている状態です。これは若年期からスポーツ活動の多い人に多くみられます。 骨の出っ張りが股関節唇と繰り返し擦れ合うことで、関節唇が損傷し、さらに進行すると軟骨にもダメージが及んでいきます。
一方、Pincer変形※2 と呼ばれるタイプでは、寛骨臼(骨盤側の受け皿)が大腿骨頭を覆いすぎているため、股関節の動きのなかで骨同士が衝突しやすくなります。その結果、Cam変形と同様に、股関節唇や軟骨が損傷し、痛みや可動域制限が起こります。
これらの変形が進行すると、軟骨が擦り減り、「変形性股関節症」へと移行する可能性があります。そうなると痛みがさらに強まり、最終的には人工股関節置換術が必要になるケースもあります。

このような進行を防ぐためには、早期の診断と治療が重要です。FAIに対する治療として行われる股関節鏡手術では、 Cam変形に対して、出っ張っている大腿骨頭の骨を削る処置を行い、股関節唇との衝突を防ぎます。これにより、関節唇の再損傷を予防し、将来的な変形性股関節症の進行を抑えることが期待されます。
Pincer変形に対しては、過剰に覆っている寛骨臼の縁を削る処置が行われます。これにより、大腿骨頭との衝突を軽減し、関節唇や軟骨への負担を減らします。関節唇に損傷がある場合には、状況に応じて関節唇の修復や滑膜切除などの処置が併せて行われます。

入院・手術後の生活

股関節鏡手術は、入院期間が短く、比較的早い段階で歩行が可能ですが、適切で継続的なリハビリを行うことが回復には重要です。焦らず長期的に回復を目指すことが、良好な結果に繋がります。
調子がよいときでも、できるだけ、年に1回は通院することが大切です。

入院期間

  • 関節唇縫合のみ:1週間以内に全荷重で退院
  • Cam形成を加えた場合:1~2週間で全荷重退院

スポーツ復帰の目安

  • ランニング:術後約3ヶ月で再開
  • コンタクトスポーツ(サッカーなど):術後約半年

股関節鏡手術のリスク

関節鏡手術では一般に出血はごく少量であり、体にかかる負担は極めて少ないです。人工関節に比べて術後感染や血栓症など重篤な合併症リスクは低いです。しかしながら以下に挙げるような特有のリスクがあります。

1.  疼痛残存または再発

関節鏡手術では傷んだ関節唇の修復を行いますが軟骨の修復はできません。そのためすでに軟骨が一定程度損傷している場合などは疼痛が一部残ったり、術後に再発したりするリスクがあります。

2. 変形性股関節症進行リスク

上記の理由により軟骨がすでに損傷している場合、つまり変形性股関節症がすでに始まっている場合にはその進行が止められないリスクがあります。変形性関節症が進行した場合には人工関節手術への移行を考慮します。